独学+Webサイト+直前対策講座=短期合格!使えるものは賢く使いましょう!

  • 投稿者:たくさん
  • 勉強形態:独学
  • 受験回数:1回
  • 勉強期間:約1か月半

はじめに

 第141回簿記検定3級・2級に合格しましたので、私の受験体験がこの先どなたかのお役に立てればと思い投稿しました。

 簿記検定を受けようと思ったきっかけは学生時代の先輩の一言です。理系の大学に通っていたのですが、「理系で簿記2級を持っていれば周りよりも評価してもらえる」と言われ、社会人になったら受けてみようかなと、やや打算的な動機をもっていました。

 ただ就職後は忙しさにかまけて後回しになってしまい、せっかく購入したテキストも開くことなく数年放置していました。今年の秋口になり少し時間が出来たため、11月の受験を決め勉強を開始しました。

勉強開始時の知識レベル

 社会人5年目。会計関係の予備知識は全くのゼロ。

使用したテキスト

  • スッキリわかる 日商簿記3級 テキスト&問題集
  • スッキリとける 日商簿記3級 過去+予想問題集
  • スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記 テキスト&問題集
  • スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 テキスト&問題集
  • スッキリとける 日商簿記2級 過去+予想問題集

 テキストは数年前にあまり考えず安さ重視で購入していたもの。受験を決意してから選びなおすか悩み本屋で見比べましたが、とっつきやすさでは随一と感じたのでそのまま使用することにしました。

 過去問題集は今回初めて購入しましたが、テキストとリンクしていたら役立つなと考えたこと(これは思い過ごしで、使ってみると単独でも問題ありませんでした)と、同じ回の過去問解説を他の問題集と見比べたところ、内容や分かりやすさに大きな違いはなかったことから、同じシリーズで揃えることにしました。

 他のテキストは詳しく読み込んでいないので分かりませんが、このシリーズでは新しい仕訳や勘定科目が出てくる度に「まず今まで学んだ知識で仕訳を切ってみる」ところから始めるストーリーになっていることが特徴です。

 この構成のおかげで、暗記しなければならない新しい内容も頭に入ってきやすく、一度覚えたことの復習にもなるのでスムーズに勉強を進めることが出来ました。

 欠点としては、細かいことには触れないよう解説されているので稀に不十分と感じる箇所があったり、過去問に出てきた勘定科目がテキストで網羅されていないことが挙げられます。

 分からないときは簿記検定ナビの解説を読んだりネットで調べたりする必要がある点はイマイチで、決してこれだけで全て分かるテキストではありません。

 ただ、自力で調べなければならないボリュームは感覚的には1割にも満たないレベルであり、少し時間に余裕があればストレスに感じるほどではありません。

使用した電卓:SHARP EL-N802-SX

 簿記の勉強をする前までは電卓と言えば手のひらに乗るサイズと思っていましたが、卓上で使うにはもっと大きいものが適していることを知りました。

 この電卓はシャープでは”ナイスサイズ”というところに分類されるもので、手の大きい私でも窮屈な思いをせず気持ちよく使える良品です。

 あまりこだわりはありませんでしたが、背面の脚を立てるとディスプレイの角度が変わり見やすくなること、すべり止めのゴムが背面に4箇所ついていて安定性が高いこと、そして何より見た目がシンプルで仰々しくないところが気に入っています。

 なお、簿記だけを考えれば機能としては必要十分ですが、√ボタンがある電卓の方がより汎用性は高いと思います。

勉強方法

 予備知識ゼロの状態から始めることになったので、まずはテキストを読み進め、練習問題を一通り解きました。スッキリ シリーズは数ページ毎に練習問題がついていて、学んだ知識をすぐに問題の形で確認することが出来ます。

 初めて聞く言葉も多くとまどいましたが、「簿記ではこう処理する」を身につけることが重要なので、なぜなぜと深追いはせず「こんなものだ」と受け入れる姿勢を心がけました。

 簿記の試験は特に問題が解けてなんぼなところがあるので、テキストを熟読するようなことはせず、1周した後すぐに過去問題集へと移りました。

 スッキリシリーズでは過去6回分+予想問題3回分の演習ができ、それぞれ2回ずつ解くころには試験のくせや解法を身につけられたかなと思います。

 2級の勉強も基本的には同じでしたが、特に本支店会計や本社工場会計、標準原価計算の単元では知識が定着しておらず、過去問を2周した後に再度テキストの練習問題を解き直しました。

 要した時間を整理すると…

  • 3級 テキスト+練習問題:20時間
  • 3級 過去問+予想問題:20時間
  • 2級 テキスト+練習問題:30時間
  • 2級 過去問+予想問題:100時間
  • TOTAL:170時間

 …といった具合です。2級の過去問には特に時間をかけましたが、漫然と解いていては時間ばかり過ぎてしまいます。回数別に一通り解いた後は大問毎に解答解説を熟読し、不明点を放置せず納得した上で次の問題に移るよう心がけました。

 また、過去問を解いていく過程で苦手だなと思う分野が出てきました。試験本番では大問一つ丸々落とすと得点へのインパクトが大きいため、苦手分野にしっかりと向き合い克服していくことが、合格への近道だと考えています。

 そのため、大問を苦手な分野毎(有価証券、本社工場会計、標準原価計算など)に振り分け、同じ分野を集中・連続して解き解法を身につけていくよう工夫しました。

 過去問の中では「これはさすがに分からないよ・・・」とか「これはちょっと複雑すぎないか」と思うものもありました。しっかりと理解することが重要である一方で、本番では70点とれれば合格です。

 簿記検定ナビでは、過去問の解説や受験生アンケートを見て難易度を確認し安心することも出来ましたし、みんなが取れないところは潔く捨てることで時間を効率よく使えたかなと思います。

 資格試験では「絶対とるべき問題」「無理しなくて良い問題」を見極めることが非常に大切ですが、特に独学ではこの判断がつきません。

 その点、「精算表の当期純利益は取れなくても良い」など、過去問ひとつひとつについて重要度が分かる簿記検定ナビは、独学の強い味方だったと思います。

少しだけ作ったまとめノート1
少しだけ作ったまとめノート1
少しだけ作ったまとめノート2
少しだけ作ったまとめノート2

試験直前

 独学での勉強に不安があったこともあり、受験票に同封されていた直前対策講座の案内を見て受講することにしました。

 講義形式のものを1回、模擬試験を2回受講しましたが、独学での理解が正しいか直接講師に質問が出来たり、試験の雰囲気を味わえたりと、良い機会になりました。1回1,000円程度で受講できるので、独学で息が詰まっている方には是非勧めたいと思います。

※編集注 TACや大原だけでなく、独自の試験対策講座を開講している商工会議所もあります。たくさんが受講されたのは、おそらく商工会議所主催の直前対策講座だと思われます。興味がある方は、各商工会議所に直接お問い合わせください。

試験日の1日の流れ

  • 7:00 起床

 簡単に朝食をとり、試験会場近くの親戚の家へ車で向かいました。慣れない駐車場に止める際、壁にバンパーを擦ってしまったことは内緒です。泣きながら電車に乗り継ぎ試験会場へ向かいました。

  • 8:15 到着

 少し早過ぎたかなと思いましたが、会場は半分ほど席が埋まった状態でした。ミスノートをまともに作成していなかったので試験直前の時間を過ごすのに適したアイテムがなく、テキストのメモ書きを見返したり周囲をキョロキョロ見渡したりしていました。完全に挙動不審です。

 9時に近づくにつれ人は増えていき、5分前には欠席者を除き全員着席していたように思います。3名掛けor4名掛けの机に2人ずつ着席、150名ほどの受験者に対して試験監督員は3名という配置でした。

  • 9:12 3級 試験開始

 試験に関する簡単な説明を受けたあと、3級の試験が始まりました。模擬試験を受けていたおかげで問題用紙や解答用紙のイメージが出来ており、普段の勉強通り緊張せずにペンを進めることが出来ました。

 3級の問題は過去問でも軒並み90点前後を取れており、今回の試験でも極端に難しいと感じる箇所はなくスムーズに解けたと思います。一通り解いた段階で時間は1時間ほど余っており、見直しと問題用紙への解答書き写しをした後、40分程度残して途中退出しました。

 試験中、特に大きな出来事はありませんでしたが、斜め前の受験生が試験官に電卓をしまうよう注意されているのを見ました。どうやら簿記検定試験に持ち込めない電卓を使おうとしていたようです。

 遠目にはごく普通の電卓のようだったので、こんなピンポイントでよく見つけたなと感心する一方、注意された女性は気の毒に感じました。

 今回の試験では特に第三問 試算表の計算量が多く、電卓がないとなかなか大変だったと思います。私は自分用のほか、予備でもう1台電卓を持ち込んでいましたが、電卓の貸し借りは禁止と忠告されていたので貸すことは出来ませんでした。

 これから受験される方は受験案内をよく読み、間違いのない電卓を用意するよう注意してください。

  • 10:40 昼休み

 会場内にはテキストを広げられるような場所がなかったため、外のカフェで食事をとりつつ午後の試験を待ちました。ここでもミスノートがあれば活用できたと思うのですが、テキストを読み、不安な箇所を一つずつ潰すように復習を繰り返しました。

 午前の試験で割と皆早めに入室することが分かっていたので、12時過ぎには会場へ戻り、またキョロキョロと人間観察をして過ごしました。

 3級の試験では右側の席だったため問題用紙、解答用紙、電卓を気持ち良く配置することが出来ましたが、会場が変わった2級の試験では左側になってしまい、少し窮屈でした。

 椅子も固定式だったため、椅子の位置で調整することも出来ません。座席を変えてもらいたいところでしたが、変更は机が破損している等物理的に使用出来ない場合に限るとのことで、認められませんでした。

  • 13:10 2級 試験開始

 3級と異なり2級はあまり余裕がなかったので、何が出題されるかずっと気になっていました。特に工業簿記は最後まで不安なままでしたが、解答用紙を見ると後半は割と得意な精算表、本社工場会計の仕訳問題、CVP分析であると分かり、少し安心しました。

 直前講座では「問題構造の把握に比較的時間のかかる工業簿記から」解くようアドバイスを受けましたが、それまでの過去問演習ではずっと第1問から解いていたので、本番もこの順序で解き始めました。

 第1問:初めて目にする”構築物”という勘定科目や”貯蔵品に計上されている修理用部品”という「何を言っているのだい?」と思う記述が出たりと、出鼻をくじかれる問題でした。

 ただし、過去問でも素直に考えればそうだよな、という仕訳ばかりが出題されていたので、不安を覚えつつも分かる範囲で素直に埋めていきました。

 第2問:第1問に引き続き、今度は解答形式が見たことのないものだったので「終わった・・・」と思いました。

 何をしたかは理解できるのですが、特に問1はどういうルールで解答欄を埋めていけば良いのかよく分からず、これもとにかく分かるところを素直に解答するよう心がけました。

 後から気付きましたが各勘定の仕丁欄は見落としてしまい、全部空欄のまま終えてしまいました。過去問や練習問題では仕丁欄に”省略”と記載されている場合が多いのですが、完全に注意力不足でした。

 第3問:得意な精算表の問題。これまでの勉強でも仕訳でつまずくことはなかったので、計算ミスにだけ気をつけて解き進めました。普段過去問を解くときの1.5倍程度時間をかけるイメージで進めていった結果、各列の貸方借方が一致したので少し気持ちが持ち直しました。

 第4問:過去問を解く過程で苦手だなと感じ、念入りに復習することで得意分野となった本社工場会計の問題が出たので、救われた思いでした。本社工場会計とは言ってもほとんどが工場内で簡潔する仕訳であり、こちらも計算ミスに注意しながら進めていきました。

 第5問:得意なCVP分析で安心したのも束の間、どこを読んでも販売数量の記載がないことに慌てました。

 「こりゃ奇問だな・・・」と諦め半分になり、販売数量を適当に仮定して計算を進めたところ、なんのことはない。設問は売上高だけを聞いているので、販売数量は計算途中で消えることに気がつきました。

 「してやられたな」と思いながら販売数量を2倍にして検算し、間違いのないことを確信しました。

 退出可能時間になった瞬間に男性が一人出ていったので、半分も進んでいなかった私は焦りましたが、集中して解き進めたところ30分程度残して一通り解答が終わりました。

 3級と同様、見直しと答えの書き写しを行い、第2問に最後まで唸りながら時間切れ。結果に自信はなく、第1問、第2問の出来次第だなぁと考えながら会場を後にしました。

試験結果

  • 3級:94点
  • 2級:82点

 3級は自己採点通り。不安だった2級の勘定記入の問題も、部分点がもらえたため10点/20点となっており、まずまずの成績でした。

 なお、後述の通り仕丁欄は全て空欄、問2は正解、問3は(1)のみ正解で10点だったため、問1は1行全て正解が必須というわけではなさそうです。

やってよかったこと

 簿記の勉強には、仕訳問題を除いて解答用紙が必須になります。

 地味なことですが、解答用紙を予め何回分か印刷し解答用紙ファイルをきちんと作っておくことにより、調子の良いときにリズムを崩さず勉強を続けられたり、過去問を繰り返し解く際に前回の振り返りが出来たりと、メリットは多かったと思います。

解答用紙ファイル
解答用紙ファイル

反省点

 ミスノートはしっかり作っておくべきでした。大切な点をたまにメモすることはありましたが、メモ用紙に殴り書きをして終わってしまっていました。

 もっとちゃんと作っておけばすきま時間に見返すことで記憶が定着したり、試験直前に見直すお守りのようにも使え、もっと余裕をもって合格出来たかなと思います。

最後に

 学生時代以来の独学はなかなか辛いものがありましたが、一生懸命勉強を続けた結果、念願の合格にたどりつくことが出来ました。目標をもってコツコツ地道に進めていく感覚は久しぶりで懐かしく、良い経験になったと思います。

 今回の試験問題についてはさまざま意見があるようですが、正直なところ難易度の割に良問とも言えず、解けないからといって気にするほどのものでもないと思います。

 それよりも頻出する仕訳問題や決算整理、勘定連絡図など、それぞれ基礎となる知識・解法を身につけていくことが先決です。

 これから受験される方は、簿記検定ナビを参考に「皆が取れる問題は着実に」「皆が難問と感じるものはほどほどに」取り組んでいくことで、必ず合格に近づいていくことが出来るでしょう。

 長くなりましたが、これで合格体験記を終わりにしたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございます。試験合格を目指し、頑張ってください。応援しています。

管理人からたくさんへ追加の質問

 勉強期間中のモチベーションの維持方法を教えて下さい。
 社会人で時間もなく、今回で絶対受かろうという気持ちが強くあったので、モチベーションの維持にはそこまで苦労しませんでした。期間が短めで追い込まれていたことも、結果的には良かったと思います。

 もちろんやる気が出ず1日、2日サボってしまうことはありましたが、サボっては解けなくなって、というのを何度か繰り返してからは、毎日少しでも机に向かうようになりました。

 どのようにして合格を知りましたか?合格発表日の様子を教えてください。
 商工会議所のHPで公表されると案内があったので、そこでまず結果を確認しました。前日の夜は何故か本番以上にドキドキして眠れなかったのを覚えています。

 朝からPCの前で待機し、発表時刻にはF5連打です。web上では合否の確認のみでしたが、帰宅してみると商工会議所から封筒が届いており、そこで点数を知ることが出来ました。

管理人コメント

 たくさん、合格体験記のご投稿ありがとうございました!WEBサイトや直前対策講座をうまく使って短期合格をされたたくさんの戦略は、まさに「お見事!」の一言です。

 個人的に、一番参考にしていただきたいのは「大問を苦手な分野毎(有価証券、本社工場会計、標準原価計算など)に振り分け、同じ分野を集中・連続して解き解法を身につけていくよう工夫しました」というところです。

 簿記検定ナビでも、このような解き方を「まとめ解き」いうネーミングでご紹介していますが、苦手分野の克服にはうってつけの手法ですので、同様の悩みを抱えている受験生の方はぜひやってみてください。

 あとは、たくさんは「皆が取れる問題は着実に」「皆が難問と感じるものはほどほどに」とおっしゃっていますが、メリハリを付けて勉強するのも重要です。

 ただ漫然と勉強を進めていくのではなく、合格点の70点を取るために絶対落としてはいけない論点は厚く、落としても合否に響かない枝葉末節な論点はサラッと済ませる…というような感じで、メリハリを付けることをおすすめします。

たくさんが使われた教材や電卓のまとめ