インプットよりもアウトプット(問題演習)にたくさんの時間を使いましょう!

  • 投稿者:つば九郎さん
  • 勉強形態:独学
  • 受験回数:1回
  • 勉強期間:約3か月

勉強のきっかけ

 私は現在25歳です。就職活動に失敗して、現在派遣社員として働いています。なんとか正社員として働きたいなと日々考えています。

 そんなふうに悩んでいる時、会社の上司から、「私の父親が大企業の経理部でかなりのポジションにいるんだけど、経理に興味あるなら紹介してあげようか」と話しをいただきました。

 同じタイミングで私の父も経理の仕事をしていることを初めて知り、段々と経理に強い興味をいだくようになりました。そこで、経理に必要不可欠な簿記の資格を取得しようと決意しました。

勉強開始前の実力

 簿記という資格は知っていましたが、電卓を使うということくらいしか知りませんでした。そこで、まずはネットでどれくらい勉強すれば良いのか調べました。

 『2週間で簿記2級合格』や『1ヶ月もあれば簿記は余裕』というようなページが多数見つかったため、「まあ2週間は無理でも、1ヶ月ちょっとあれば受かるだろう」と考えました。

 この時が3月の始めでしたので、少なくとも6月の試験までには余裕だと思ったのです。後にこれが大いなる誤りだと気づく訳ですが…。

参考書選び

『日商簿記3、2級 受かる勉強法落ちる勉強法』(洋泉社)

 参考書を選ぶ前に、私はとことん効率的な合格法を調べようと思いました。まず購入したのが、『日商簿記3、2級 受かる勉強法落ちる勉強法』です。人によってはタイトルを見ただけで胡散臭いと感じると思いますが、この本がなければ一発合格は厳しかったと思います。

 もともと洋泉社は公務員試験やセンター試験などの裏ワザ的な本を多数出版しており、私が大学受験をする際にはこの裏ワザ本が本当に役に立ちました。

 受験時に勉強をサボりまくっていた私ですが、センター試験の裏ワザ本を読んだおかげでセンター試験は9割近い点数をとることができました。そうした理由で、洋泉社には強い信頼を持っていました。

 この本には勉強の仕方からテキスト選びまで細かく説明がされています。勉強の仕方で言うと、間違いノートの作り方やテキストへのマーカーの引き方まで書いてあります。参考書別の勉強スケジュールも載っており、ほぼ書いてあるスケジュール通りに勉強しました。

 出版年は2011年なので、情報が古いところもありますが、参考になる部分はかなり多いと思います。唯一難点を言えば、「工業簿記にて仕損・減損はでないので勉強しなくて良い」と書いてありますが、実際には出題されることもあるのでしっかり勉強しましょう(笑)

スッキリシリーズ(TAC出版)

 『日商簿記3、2級 受かる勉強法落ちる勉強法』の中ではサクッとシリーズとスッキリシリーズを特に推していましたが、猫の絵がかわいいのでスッキリシリーズを選ぶことにしました。スッキリシリーズは猫が会社を経営していくというストーリー仕立てになっているので、非常にわかりやすいと思います。

 簿記を勉強するのは初めてだったので、3級と2級の商業・工業のテキストを購入しました。すべてボロボロになるくらいまで読み込みました。

簿記2級みんなが欲しかった問題演習の本(TAC出版)

 こちらも『日商簿記3、2級 受かる勉強法落ちる勉強法』の中でおすすめされていました。スッキリシリーズのテキストが終わり次第、こちらを始めると良いと思います。

 解説がとても充実しており、理解が深まることは間違いありません。スッキリシリーズと同じ著者なので、参考書の中におなじみの猫が出てきて愉快な気分になります。

スッキリとける日商簿記2級 過去+予想問題集(TAC出版)

 最後に過去問集ですが、この際スッキリシリーズで統一しようということで『スッキリとける日商簿記2級 過去+予想問題集】を選びました。

 こちらは2014年に初めて出版されたため、アマゾンなどでレビューを見ることが出来ませんでした。そのため購入に不安がありましたが、他の過去問はなんとなく解説があっさりしすぎな気がしたので、こちらを購入しました。

 が、スッキリシリーズに出てくるおなじみの猫は登場するもののの、テキストのように丁寧な解説ではありませんでした。解説を読んでもわからないことが多く、理解するのにものすごく時間がかかりました。また、予想問題集は明らかに本試験の問題より難易度が高いと感じました。

ラストスパート模試(ネットスクール)

 スッキリの過去問がイマイチなため、試験2週間前に急遽こちらの予想問題集を買いました。こちらは解説も詳しく、過去問の分析もしっかりしているので、予想問題集としてはおすすめです。

勉強時間

 フルタイムで週5日働いているため、勉強は仕事後に、平均すると1日3時間くらい勉強しました。といってもサボることも多く、1日1時間しかやらない日もありました。試験1ヶ月前までは土日もあまり勉強しませんでしたが、直前期は平日4時間をノルマに課して勉強しました。

 「Study plus」というスマートフォンのアプリがあり、これが勉強のモチベーション維持に役立ちました。毎日の勉強時間を記録することができ、それが増えていくのが楽しいので、自然と勉強する気持ちになれます。

 通勤の電車の中で勉強することも多かったので、少し参考書を読んではアプリに時間を記録し、「これで15分稼いだ!」などとささやかな喜びを感じていました。

 このアプリはSNS的な要素が強く、他に勉強している人とつながって勉強の記録にコメントをつけることも出来ます。本当は人とのつながりを求めてこのアプリを使う人が多いのでしょうが、他人の勉強にコメントしている暇があれば勉強するべきだと思ったので、誰とも友達になりませんでした。

 でもこのアプリは勉強の記録用として非常にお勧めです。ちなみに、合格までの勉強時間を全て合計したところ、およそ250時間でした。

勉強方法

3月上旬から中旬(2週間)

 まずは簿記3級のテキストを読み込みました。3級は簡単なのでどんどん読み進めたのですが、早く2級のテキストに入りたいという気持ちが強く、精算表の作り方などをかなり読み飛ばしたため、後にものすごく苦労することになりました…。

 最初はテキストをノートに書き写したりまとめたりしていましたが、これは時間がかかるだけなのでやめたほうが良いです。

3月中旬から4月中旬(3週間)

 つづいて2級の工業簿記から勉強を始めました。工業簿記から始めた理由は、商業の参考書の最新版がまだ発売されていなかったということだけです。

 工業簿記の仕訳などはわかったのですが、単純総合原価計算以降はもう何もわからなくなりました。工業簿記のテキストがわかるようになるのには時間がかかり、1ヶ月近くもテキストを理解することだけに費やしました。

 簿記2級は1ヶ月で受かるものだと信じていた私は、この辺りで自分に簿記の才能がないのだと嘆き、悲しみに沈みました。

4月中旬から5月初旬(2週間)

 やっと工業簿記のテキストが終わったので、商業簿記に移行しました。「商業簿記なんて3級の続きなんだから余裕だな」と思っていましたが、やはりここでも私の考えは打ち砕かれました。

 とにかく覚えることが多く、毎日テキストを読んでも次から次へと忘れて行きました。そしてたまに工業簿記を復習すると、工業簿記も忘れていっていることに気づき、やはり悲しみに沈みました。多い日は1日50ページは読み進めました。

5月初旬から5月下旬(3週間)

 テキストを終え、ようやく『簿記2級みんなが欲しかった問題演習の本』に入りました。テキストを一応理解したつもりだったので、問題も解けるかと思っていたのですが、次から次へと知らない問題が出てきて、一発で解けた問題はひとつもありませんでした。

 試験までの日にちも迫り、焦りもありましたが、とにかく反復しての演習を繰り返しました。

5月下旬から試験前日(2週間)

 気づけばもう5月も終わりに近づく頃、ようやく過去問演習に入りました。『簿記2級みんなが欲しかった問題演習の本』は完璧にマスターしていたので、過去問も余裕だろうと思っていましたが、見たことのない問題の連続で、6月の合格を諦めようと本気で考え始めました。

 テキストと問題演習を共に理解して、なぜ過去問に手も足も出ないのか不思議で仕方ありませんでした。何か根本的なところを理解していないのではないかと悩みました。

 しかし悩んでももう試験はすぐそこまで迫っているので、とにかく問題を解いて、その問題ごとに解き方を覚えるということを続けました。過去問は結局過去6回分をやりました。予想問題の演習はスッキリの過去問で3回分、ラストスパート模試で2回分やりました。

 これから簿記の勉強を始める方には、テキストの7割くらいの理解ができたら問題演習に移ることを強くおすすめします。テキストを読んだだけでは問題は解けませんし、理解も深まりません。問題を解いてテキストの意味が初めて分かることも非常に多かったです。

試験日の1日の流れ

  • AM 8:00 起床

 前日に焦りで2時まで勉強してしまったため、遅くまで寝てしまいました。合格する自信はありませんでしたが、それでもかなりの時間を簿記にささげてきたので、起きた瞬間から強烈な緊張感に襲われました。

 緊張からか5日放置したカレーを前日に食べたからか、お腹を下してしまい、試験までに何度もトイレへいきました。

  • AM 9:00~11:00 復習

 ここで焦って新しい問題を解いても仕方ないと思ったので、とにかく今までやってきたものをパラパラと見直しました。この時、第2問に出題される特殊仕訳帳についての知識が完全に抜け落ちていることに気づきました。

 私は過去6回分の過去問に取り組みましたが、その6回に一度も出題されていなかったのです。過去6回に出題されていないということは、今回出題される可能性があるということにもなるので、パニックになりました。

 「もっと余裕をもって勉強しておけば…」という言葉が何度も浮かびました。

  • PM 12:30 試験会場に到着

 試験会場の開場時間に合わせて到着するようにしました。この日は雨だったため、教室内の空気が非常に悪かったです。また、試験会場の机が非常に狭く、更に合格が遠のいていく気がしました。

  • PM 13:40 答案用紙に名前を記入

 試験の問題用紙と答案用紙を配られると、答案用紙に名前と受験番号を記入するよう指示がありました。つまり試験開始前に答案用紙は見ることができるのですが、表紙をめくると第2問に「銀行勘定調整表」の文字が目に飛び込んできました。

 銀行勘定調整の問題は1年前の2013年の6月に出題されており、テキストにはあまり出題されないと記載があったため、完全に手をぬいていた単元でした。また、2013年6月の試験は合格率が極端に低かったため、同じような問題は出されないだろうと高をくくっていました。

 この段階で頭が真っ白になりました。「ああ、本当に頭が真っ白になることってあるんだなぁ」と思ったことだけは覚えています。完全に「落ちたな」と思いました。

  • PM 13:45 試験開始

 銀行勘定調整は後回しにするとして、とにかく頑張るしかありません。第1問→第4問→第5問→第3問→第2問の順番で問題を解いていくことにしました。

 第1問の仕訳はひねったような問題が多い印象でした。第3問の損益計算書の作成は見たこともないような決算整理の問い方ばかりでした。第5問は簡単な工程別総合原価計算でしたが、これも少し頭を使わないと答えまでたどりつけないような気がしました。

 結局全ての問題を解いた時点で20分程時間が余りました。時間があまればもちろん見直しをするべきなのですが、もうこの時点で
疲労困憊だったので、桁数の間違えや電卓の計算ミスがあるかどうかの確認をするくらいしか出来ませんでした。

 2時間はやはり長く険しいです。

 また、余った時間に自分が答案用紙に記入した答えを全て問題用紙に書き写して、自己採点ができるようにしました。

  • PM 15:45 試験終了

 帰宅後、各予備校のホームページを参考に自己採点をしたところ、75点前後とれていることがわかりました。完全に運が良かっただけです。また、ケアレスミスで10点程失っているのがわかりました。試験で余った時間を全て見直しにつかっていれば…と悔いが残りました。

 自己採点は合格点を超えましたが、5点ほどしか超えていないので、落ちている可能性は十分あると思い、発表まで不安で仕方ありませんでした。

 試験から2週間後の合格発表を見た時は、喜びよりも、ホッと安心したという気持ちが強かったです。

管理人からつば九郎さんへ追加の質問

 今回、勉強に使われた電卓の機種を教えてください。またその電卓は他の方にもおすすめ出来ますか?
 簿記検定ナビでも紹介されていた、【CANON HS-1220TUG】を使用しました。評判通り安価な割に使いやすかったです。試験開場では小さな電卓を使っている人もいましたが、非常にやりにくいのではないかと思いました。

 試験時に私の前の席の方が有名大学の学生さんだったみたいなのですが(学生証が見えました)同じ電卓を使っていました。合格発表を見た時にその方の受験番号も乗っていたので、やはり電卓にはこだわった方がいいかもしれません。

 つば九郎さんの得意な論点と苦手な論点を教えてください。また、苦手な論点を克服するためにどのような勉強をされましたか?
 得意な論点は工業簿記の単純総合原価計算や工程別総合原価計算などの原価計算問題でしょうか。私は工業簿記から勉強を始めたのですが、最初に躓いたのがこの論点でした。

 月初仕掛品・当月投入・完成品・月末仕掛品の図を書いて計算しますが、なぜ図を書かなければならないのか、当月投入は直接材料費と加工費の計算でなぜ数値が違うのかなど、全く理解出来ませんでした。

 テキストに載っている例題を1問解くのに2時間くらいかかりました。諦めずに何度も何度も問題を解いたことで、確実に点数が取れるようになりました。

 苦手な論点は、本支店会計です。何度説明を読んでもよくわかりませんでした。

 途中までは頑張って理解しようとしましたが、本支店会計は2回連続では出題されないという話を聞き、前回の試験(136)で出題されていたこともあり、自然と勉強を後回しにしてしまいました。出題されていたら間違いなく落ちていました。

 ご自身の勉強方法を振り返っていただき、これから勉強を始める方にアドバイスがあればお願いします。
 とにかくテキストをある程度読んだら、すぐに問題演習に移ることが大事だと思います。テキストを読んだだけでは理解できない論点も、問題を解いてみてから解説を読むと理解がものすごく早くなります。

 どうしても問題を解くのは頭も時間も使うので億劫になってしまいますが、問題を解きまくることが合格の早道なのは間違いありません。

 あと、これは皆さんやっているのかもしれませんが、数字にカンマを入れて書く習慣を身につけた方がいいと思います。私は最後までカンマを入れずに勉強していたため、ケアレスミスが非常に多かったです。

 そろばんの試験ではカンマを入れて解答するのは必須と聞いて、簿記試験の本番でもカンマを入れなければと思いましたが、問題ごとにカンマを入れたり入れなかったりして解答してしまいました。

 結局合格したので、採点には関係ないのでしょうが、父に「カンマを入れて書くのは常識」と言われてしまったので、最初から習慣化しておいた方がいいと思います。

管理人コメント

 つば九郎さん、合格体験記のご投稿ありがとうございました!知識ゼロの状態からスタート、しかもフルタイムで働きながら3か月で2級に合格するのはすごいと思います。

 つば九郎さんの合格体験記で一番参考にしていただきたいのは、「テキストの7割くらいの理解ができたら問題演習に移ることを強くおすすめします」というところです。

 テキストの内容をきちんと理解することはもちろん大事です。ただ、費用対効果を考えずに「完ぺきな理解」に固執することはおすすめしません。受験勉強が長引くだけです。

 簿記の力はインプットではなくアウトプットで養われるので、つば九郎さんのように問題演習(アウトプット)に出来るかぎり時間を割くように心がけてください。

 なお、カンマについては、たまに「絶対に付けなければいけませんか?」という質問をいただきますが、カンマの有無は採点対象ではないので、付けないからといって即不正解になるわけではありません。

 ただ、カンマを付けないデメリットはあってもメリットはひとつもないので、練習段階から必ずカンマを付けてください

つば九郎さんが使われた教材や電卓のまとめ