学習の途中で理解できない点があっても、立ち止まらず走り続けましょう!

  • 投稿者:マエストロさん
  • 勉強形態:独学
  • 受験回数:2回
  • 勉強期間:約6か月
  • 備考:1回目は通信講座、2回目は独学

はじめに

 私はIT企業で営業職をしている30代後半の者です。営業の仕事ではありますが、商品を顧客企業と直接取引をするのではなく間接的な営業であるため、代金回収等もしたことがありません。

 「売掛金」とか「減価償却」といった言葉は聞いたことがあっても、意味は細かく理解まではしていませんでしたし、企業の財務諸表を見ても、どのように作られるのか、何がポイントなのかといったこともイマイチ、という状態でした。

 社会人歴15年ほどになるのですが、まだ今後30年ほどあるであろうビジネスパーソン人生を考えたときに、なるべく早いうちに簿記会計の基礎を全般的に学習しておいた方が良いのでは、と漠然と考えていました。

 仕事とは関係ない資格ですが、もともと興味を持っていたFPの勉強を2016年1月から行っており、通信教育「フォーサイト」を利用して、2016年5月にFP技能検定2級を受けて、一発で合格。

 その後ひと段落して、勉強する習慣を忘れないうちに2016年7月から、同じく簿記もフォーサイトの通信講座を利用して簿記の学習をスタートさせました。簿記知識ゼロからのスタートではありましたが、最初から2級のみの受検と決めていました。

 こちらの簿記検定ナビさんには、とくに「出題傾向・過去問分析」「試験問題予想」といった実践的な内容がとても有用でお世話になりましたので、合格した証を残させていただきたいという思いもあり、体験記を投稿させていただきました。

使用したテキスト・教材・電卓

使用したテキスト・教材・電卓

  • 第144回 挑戦時
    • フォーサイト 簿記講座 3級+2級セット
  • 第145回 挑戦時
    • スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記 第8版 (TAC)
    • スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 第5版 (TAC)
    • 日商簿記2級 みんなが欲しかった問題演習の本 第2版 (TAC)
    • 2016年度版 スッキリとける 日商簿記2級 過去+予想問題 (TAC)

 1回目の受検(第144回)に向けては、フォーサイトの教材のみで学習していました。フォーサイトの通信講座を選んだ理由は、簿記知識ゼロからのスタートで独学では挫折してしまうかもという不安と、FP講座の内容が良かったので、あまり考えずに、簿記講座にも申し込みをしました。

 2級&3級セットで、テキスト・講義DVD・問題集&過去問(6回分)・eラーニングでの確認テスト&講師への質問15回分が含まれており、内容は充実してはいますが、3万円強しますので、独学よりは高くついてしまいます。今考えると最初から独学でも良かったと思っています。(※あくまでも個人的な感想です)

 1回目の受検で不合格となった後、再度2級にチャレンジするにあたっては、簿記ナビのおすすめテキストのページを参照させていただき、TACのスッキリシリーズと過去問、問題演習の本を購入し学習しました。

 電卓については、FP2級の受検のために「カシオ DF-120GT-N」という機種を購入していたので、簿記でもこれを使いました。個人的に、「0」のボタンが他の数字部分から離れているところに配置されている(1の左下に0がある)のは嫌だったので、この機種を選びました。

 横幅がちょっと大きめなので、持ち歩きを考えるともう少しコンパクトな方が良かったですが、打鍵感、使い心地は問題なかったですし、液晶部分が好みの角度に調整できるのが便利でした。

テキスト以外で役立った本

 簿記の学習に取り掛かる前にまずしたことは、図書館で簿記の入門本を借りてきて読むことでした。

 私は新しい分野の学習をする際には、入門書をまず数冊読むことが多いのですが、簿記では下記の本を読んで大まかな概要をつかみました。どちらの本も、イラスト入りでとっつきやすく、本格的に学習に入る前の導入として役立ちました。

  • はじめての人の簿記入門塾 (浜田 勝義)
  • 数字が苦手な人のための簿記「超」入門 (今村 正)

 また、財務諸表をしっかり読めるようになることが、簿記の勉強を始めた動機の一つでしたので、その点で下記の本もとても有用でした。ドリル形式で実際に数字を書き込んでいきながら、財務3表のつながりが理解できる仕組みになっています。

  • 書いてマスター! 財務3表・実戦ドリル (國貞 克則)

 2級商業のインプットが終わった段階で、おさらいがてら取り組んでみるのも良いと思います。(私はだいぶ前に購入していたのですが、実際にやってみたのは145回の受検が終わった後でしたが)

学習の進め方 <第144回受検時>

 2016年7月半ばから学習をスタート。3級の学習は1カ月ほどで終わらせて、2級の学習を3カ月位かけてじっくり取り組む予定でした。しかし実際は、内容がなかなか頭に入らず時間がかかり、3級の学習で2カ月かかってしまいました。

インプット

 上記の入門本2冊を読んだ後に、フォーサイトの講義DVDを見ながら3級の始めから順にテキストを読み進めていきました。DVDを見ていると眠くなってしまうことも多々あったのですが、動画をダウンロードして移動中にスマホでも見るなどして、毎日何かしらの学習を続けるよう心がけました

 後述もしていますが、なかなか内容が理解できない点については、2-3回テキストを読み、答えを見ながら問題を解いて、先に進むようにしていました。

アウトプット

 フォーサイトのテキストでインプットを行い、単元ごとに、付属の問題集を解いていきました。簿記の問題の解き方になじむためにも、A4コピー用紙を大量に用意して、手を動かしてどんどん仕訳を書いていきました。

 3級のインプットと問題集を終えて、同じく付属の過去問集(135回~140回の6回分が収録)を解いた後、2級の学習に入りましたが、この時点で9月下旬。2級も同じ要領で進めましたが、時間切れのため2級の過去問は138回~140回の3回分を各1回ずつしかできませんでした。

反省点

 2級の学習に入る前に、3級の内容をしっかりマスターしておきたいと思い、3級の仕訳をみっちりやりこみました。この方針自体は悪くなかったと思っています。

 しかし、11月に2級に合格するというターゲットにおいては、学習のスケジューリングが不十分で、2級の問題を解く量が絶対的に不足していました。試験直前は、土日には8時間ほど勉強しましたがキャッチアップできず、結果は 8/2/18/10/12 の50点という結果で惨敗となりました。

学習の進め方 <第145回受検時>

 144回受検を終えた12月は年末でバタバタしていて、一時的に簿記の勉強から遠ざかっていました。しかし、146回からは新たに追加される論点があるため、なんとか145回で合格したいと思い、2017年1月中旬から再始動しました。

 再挑戦にあたっては、簿記ナビのおすすめテキストも参照させていただき、TACの教材を購入しました。また、スマホのStudyPlusアプリを使い始めたのですが、自分の学習ペースのトラッキングもできるし他の受検者の学習状況が刺激となるので使ってよかったです。

 週ごとの学習時間のグラフが、試験日が近づくにつれて右肩上がりに伸びていったのが、達成感にもつながりました。

インプット

 1カ月ほど学習のブランクがありましたが、3級レベルはクリアできていると思ったので、2級の学習からやり直しました。アウトプットを重視する方針にしたので、商簿・工簿ともに「スッキリ」のテキストを始めから読みこんで、1月末までにさらっと内容をおさらいしました。

アウトプット

 まず、「スッキリ」に収録されている問題を単元ごとに解いていきましたが、その際に、日付と下記のしるしをつけていきました。

  • 迷わず正解できた問題⇒
  • 間違えた問題⇒ ×
  • 解けたけど自信が無い問題⇒

 2巡目に、×と△のみを、もう一度解きなおしました。その後、過去問に入る前に、「みんなが欲しかった問題演習の本」をやりました。“解き方の道しるべ”として、答えに至るまでのプロセスを、冊子に直接書き込みながら理解することができる点がとても良かったです。

 「2回目のチャレンジでもダメだった場合に、もう一度この問題集を使おう」といった気がおきないように、色々書きこんだり要復習のページに折り目を付けたりして使い倒しました。

 この「問題演習の本」を基点として、理解が不十分だった論点についてはテキストを読み直し、確実に問題に解答できるよう復習を行いました。

 その後に、「スッキリとける過去+予想問題」に取り組んだところ、過去問で80~90点ほど取れるようになりました。過去問を解く際には、きっちり2時間計って、その間は机から離れず、本番のような緊張感をもって取り組みました

 なお、試験直前期には、これまでの問題で引っかかったところや忘れてしまいそうな点を、「まとめメモ」としてA4用紙1枚にまとめておきました。具体的には下記のような内容を箇条書きにしたものです。

  • 配当金領収証や期限到来後の公社債利札⇒現金として扱う
  • 工場消耗品・消耗工具器具備品⇒間接材料費
  • 安全余裕率の計算式
まとめメモ

試験日1日の流れ

試験当日の午前中

 2級の試験は午後からなので、普段の週末と同じように8時半頃起床し、軽く朝食。その後ウォーミングアップがてら、工業簿記の問題を数問解きました。軽く昼食をとってから12時前に会場へ向けて出発しました。

試験会場の様子

 都内の大学が会場だったのですが、最寄り駅を降りると、ものすごい人数がぞろぞろ列になって会場方向へ歩いていました。

 会場に到着し席に着いてからは、まとめメモや、一番有用だった問題演習の本を見ながら、落ち着いて試験開始を待ちました。周りを見ると、簿記の教科書シリーズや合格テキストなど、TACの教材を開いている人が多かったです。

試験中の状況

 問題用紙と解答用紙が配布され、解答用紙に名前を書く際に、株主資本等変動計算書の解答欄が目に入りました。

 株主資本変動計算書は比較的得意な論点でしたが、数字を記入する ( ) が無い解答用紙の形式だったらちょっと不安だなぁと思っていました。しかし、今回の問題の解答形式は( ) ありで、内心で「これはもらった!」と思いながら試験開始となりました。

 これまで過去問を解く際には、第1問→第4問→第5問→第2問→第3問の順で解いていましたが、第2問が満点を狙えそうだったので、第1問を終えた後に、第2問を解きました。

 正確を期すため落ち着いてじっくり解き、どちらも満点の手応えでしたが、40分程使ってしまいちょっとゆっくりしすぎてしまいました。

 その後急いで第4問、第5問へ。工簿の中で直接原価計算は比較的好きな論点だったのですが、今回の第5問は今まで見たことのない形式でうろたえてしまいました。

 第1問・第2問で満点取れているとすれば、この第5問は6割、いや5割でもいいから点を取ろうと考えて部分点だけでも取ろうと思い何とか回答しました。

 ここまでで1時間20分経過。残りの40分となってしまいましたが、落ち着いて第3問に取り掛かりました。未払法人税等と繰越利益剰余金については、捨てる判断をして、それ以外のところで部分点を取れるようきっちり仕訳を書いて解答用紙を埋めていきました。

試験終了後

 試験開始後の前半では、第1問・第2問を好調に解けたこともあり合格できると思っていたのですが、第5問で失敗し、また、第3問もかなり難しい印象だったため、合格は厳しそうという気になり落ち込みました。各社の解答速報を見て自己採点したところ、68点~72点ほどでした。

 さすがに3度目の挑戦に向けて始動、という気には全くならず、3月16日のweb合否速報の日を待ちました。いよいよ速報発表の日の午前中、ページにアクセスし確認すると、なんと合格していました!20/20/12/12/8 の合計72点で、かなりギリギリでしたが、合格することができて本当に嬉しかったです。

簿記2級受検を振り返って

 一発合格とはいきませんでしたが、自分の意志で受検を決めて学習を継続し、無事に簿記2級に合格することができたことは、大きな達成感となりました。合格につながった、自分なりのポイントは下記の3点だと思います。

学習の途中で理解できない点があっても、立ち止まらず走り続ける

 私は性格的に、自分が納得して腹落ちしないと物事を前に進められないタイプなので、特に最初の方は、簿記のインプットにかなり苦労しました。3級の損益振替や、工簿の総合原価計算の仕損の発生点ごとの処理の違いなどは、なかなか理解できませんでした。

 しかし時間も限られているので、どんな形式で問題が出るのか確認のため、実際に理解できない部分も答えを見ながらまず問題を解いてみて、先に進むようにしました

小さな達成感や成長の過程を実感できるようにする

 過去問を解く際には、実施日・かかった時間・点数を毎回記載して、「今回は、前回よりも点数が10点UPして、時間も15分短縮して解き終えられた!」というように、ちょっとした達成感を味わえるようにしました。StudyPlusアプリも、自分の学習時間が視覚化されるので、非常に有効でした。

 また、問題を解く際の仕訳や計算はA4コピー用紙を使用していましたが、3級の学習開始から累計すると400~500枚ほどになりました。積みあがった紙の束を見て、2回目受検の直前には「これだけやったんだから大丈夫だろう」という自信にもつながりました。

簿記の学習は、スキル向上につながることを自分に言い聞かせる

 簿記の学習するにあたって、私の場合、工業簿記は最初まったくモチベーションがわきませんでした。

 商業簿記については、財務諸表の理解には必須だし、もしも自分が将来マネージメント層になったり起業したりする際には欠かせない知識だろうという思いがあり、学習することについて最初から腹落ち感がありました。

 一方、工簿についてはなんとなく、”製造業以外には関係ないもの”という先入観があったのです。そのような意識もあったので、工簿は最初なかなか内容が頭に入ってきませんでした。

 しかし、差異分析の考え方は無駄の把握・改善に役立つし、目標利益を達成するための売上高を求めるCVP分析などは業種を問わず実用的な内容である、と意識して、この機会にしっかり身につけようと思い、最後まで集中力を維持して学習を続けることができました。

管理人からマエストロさんへ追加の質問

 今回、勉強に使われた講座・教材に点数をつけるとしたら何点ですか?また、他の方にもおすすめ出来ますか?
■フォーサイト 簿記講座 3級+2級セット [80点]

 教材一式に加えて、講義の動画ファイルやテキスト・問題集・解答用紙のPDFファイルもすべてeラーニングのサイトからダウンロードできるなど、教材としては充実していると思います。
 ただ、講義の動画を長時間視聴することになりますし、眠気に耐えながらの視聴となることも多々ありました。2級レベルまでであれば、TACなどのテキストで独学で進めた方が、時間的にも費用的にも良いと思います。

■スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記 第8版 (TAC) [75点]
■スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 第5版 (TAC) [70点]

 スッキリわかるの2冊は、とっつきやすいという点ではよかったですし、価格も良心的だとおもいます。ただ、説明がかなりあっさりしている印象で、本試験レベル問題とのギャップも感じました。特に工簿は自分が苦手意識があったこともありますが、総合原価計算の部分は数回読んでも、「何故そうなるのか?」という疑問が残って、内容が腹落ちしませんでした。

■日商簿記2級 みんなが欲しかった問題演習の本 第2版 (TAC) [100点]

 これはおすすめです。私は2回目の受検時に、スッキリでのインプットを終えてから過去問に入る前に取り組みました。論点ごとにまず例題があり、解く手順が“解き方の道しるべ”として示されています。
 道しるべには空欄があり、実際に自分で数字を書き込んでいきながら、解答に至る考え方・手順を理解していくことができました。この「書き込んでいく」という形式が私は好きでした。
 いちいち解答用紙や計算用紙を用意せずとも、電卓とこの本だけあれば勉強ができるので、隙間時間などにもどんどん進めることができました。

■2016年度版 スッキリとける 日商簿記2級 過去+予想問題 (TAC) [90点]

 サイズが、スッキリわかるシリーズと同じくA5版でコンパクトなことと、値段がリーズナブルであることから、これを選びました。答案用紙も小さいので書きにくのは仕方ないですが、解説も必要十分といったところで、コストパフォーマンスがとても良いと思います。
 合格するための過去問題集(TAC)も検討したのですが、実物を書店で見たところ電話帳のようなサイズ感にひるみ、購入に至りませんでした。

 マエストロさんの得意な論点と苦手な論点を教えてください。また、苦手な論点を克服するためにどのような勉強をされましたか?
■得意な論点

 有価証券や銀行勘定調整、伝票問題(もう2級では出題されないでしょうが…)は、最初から比較的スムーズに解けていました。
 覚える事項も少ないですし、解答パターンを覚えるというより、その都度仕訳をして、「この仕訳だから、こうなるよね」とパズル感覚で問題をこなすことができていました。

■苦手な論点

 工業簿記全般、とくに総合原価計算の仕損減損や標準原価計算の差異の分析は、最後まで苦手意識が抜けませんでした。
 また、商簿の役務原価・役務収益も、問題がスムーズに解けず苦労しました。このような苦手な論点については、週末に丸一日、「役務祭り!」や「総合原価計算Day!」を開催して、丸一日その分野のテキストおさらい・過去問&予想問題解き直しを行うことで、克服に努めました。
 直前期にやったので、もう自分の理解や腹落ち感は置いておいて、とにかく出題パターンと解答へのステップを再現できるようになることを心掛けました。

管理人コメント

 マエストロさん、簿記2級試験の合格おめでとうございます。また、合格体験記をご投稿いただきありがとうございました。

 「学習の進め方」のところで赤字にさせていただいた「毎日何かしらの学習を続けるよう心がけました」「過去問を解く際には、きっちり2時間計って、その間は机から離れず、本番のような緊張感をもって取り組みました」の2点はぜひ見習っていただきたいです。

 本番を想定して問題を解く順番やペース配分を考えたり、手も足も出ないような難問に遭遇した場合にいかにして部分点を取るかを考えたり…これらの実戦的な練習をするためには、時間を計って解く必要があります。

 仕事や家事・育児で忙しい方もいらっしゃると思いますが、早朝の時間を有効活用するなどして、(直前期は特に)まとまった勉強時間を捻出してください。

 また、「簿記2級受検を振り返って」のところに書いていただいた「学習の途中で理解できない点があっても、立ち止まらず走り続ける」というのも非常に重要だと思います。

 勉強において「理解」することは大事ですが、受験生の中にはこの「理解」に固執しすぎるあまり、分からないところが出てくるたびに勉強がストップしてしまう方が結構いらっしゃいます。

 勉強時間が限られている受験の世界では、分からないところは「とりあえずこんなもんか」と計算方法のみを押さえて前に進むことも大切です。勉強が進むと、ある日突然「あーこういうことだったのか!」と腑に落ちることもよくあります。

 分からないところが出てくるたびに勉強がストップしてしまい、なかなか前に進めない…という方は、ぜひマエストロさんの考え方を参考にしてください。

マエストロさんが使われた教材や電卓のまとめ